思考錯誤

これは、俺の人生の軌跡だ。

苛烈な価格競争が一番の問題 人材派遣業界が陥った構造的なワナとは?

 

人材派遣業界の構造的な問題を、理論(法律や歴史)と実践(著者自身が実際に派遣労働者として現場で体験したこと)を元にあぶり出した本です。このご時世、本当にこんな世界があるんだなあとびっくりしました。そして、30を過ぎてなお、一般事務員としての経歴しか無く、いわゆる履歴書に書ける職歴のない自分にとっても、人ごとではないよなと、背筋が凍る思いがしました。

 

今回はこの本を読んで理解した、人材派遣業界が陥った構造的なワナについて見ていきたいと思います。ここを理解すると、この業界がなんでこんなにブラックなのかがスッキリとわかります。

 

人材派遣業は、ビジネスモデルが単純で比較的早く利益を生み出せる為、多くの会社がこぞってこの業界に参入しました。その結果、苛烈な価格競争に陥ったことが、この業界が抱える問題の根本的な原因です。

一件でも多くの受注を勝ち取りたい派遣会社は、他社より一円でも安い値段を提示しあうハメに陥りました。前に深夜のワンオペが問題視された牛丼チェーン店と一緒で、あっちが値下げしたから、こっちはもっと安い値段を提供しなければ受注してもらえない、というイタチごっこですね。

 

ありえないほど安い値段で注文を受注した派遣会社が、どうやって自分たちの利益を確保したのか?そうです。実際に現場で働く派遣労働者に対するコストを極限まで安く抑えたのです。この辺も牛丼チェーン店の問題と非常によく似ていますね。結局しわ寄せは、一番立場の弱い立場の人たちに行くわけです。

 

登録者の経歴すら確認しない、本来支払わなければならない時間外労働手当をちょろまかす、業務で必要な備品を労働者に自己負担で購入させる、業務内容をきちんと説明せずに労働者を現場に押しやるなどといったずさんな管理体制がしかれる理由は、そこにお金を掛けることができないほど安い金額で仕事を受注してきたからなんですね。そして、派遣会社はそこで浮いた分のコストをまるまる自分たちの利益にしているわけです。

 

派遣ビジネスは、ちょっと考えれば誰だってわかる無理ゲーだったわけですね。

 

しかし、この問題をここまで大きくした一番の立役者は、自分たちの利益の為に違法行為を繰り返している派遣会社ではなく、明らかに安過ぎるだろうと分かっていながら、そういった会社に仕事を外注しつづけた大手企業や官公庁にあると言っても過言ではありません。

 

一体どういうことか?

 

そして、この派遣業界の問題を解決する為には何をどうすれば良いのか?を、多分に理想論混じりではありますが、次回以降のエントリで考えたいと思います。

 

ではでは。