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30過ぎの一般事務職(男)の日々雑感

30を過ぎ、未だに一般事務(書類整理、エクセルへのデータ入力など)の仕事しか経験したことないけど、人生何とかなるもんだ、的なブログ。

「損する結婚 儲かる離婚」マジョリティに惑わされず、自分の人生において何が大切かを考えよう

 

損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書)

損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書)

 

所長の新刊を読んでの感想をば。

 

この本は、世の中のビジネスマンに世界の金融情報を独自の視点でわかりやすく解説し、ついでに読者のお悩み相談(主に恋愛について。まあ、ビジネスマンにとっては些事なんだけどね)にも辛抱強く答えてくれる有料メルマガ「金融日記」の発行人である藤沢数希先生(彼を慕うものからはなぜか「所長」の愛称で呼ばれている)が、現代日本の「結婚」という制度に対し、これまた独自の視点で問題提起を行った本である。

 

書店を見渡せば、結婚に関する本は山ほど出ているけど、この本がその他の類書と決定的に異なっているのは、結婚を金融商品として捉えなおしている点だ。

この辺は外資系金融機関に長く従事してきた筆者だからこその切り口と言える。

そして、その視点で結婚という制度を見ると、今まで見えてこなかった結婚という制度の問題点が浮き彫りになってくるのであった。

 

ぼくがこの本から学んだことは主に2つある。

1つ目は非常にテクニカルな点ではあるが、婚姻費用(いわゆるコンピ)という概念についてである。本書によると、結婚や離婚にかかる費用は大きく分けて下記の3つになる。

・慰謝料

・財産分与

・婚姻費用

この中でよく耳にするのが「慰謝料」である。慰謝料とは精神的な苦痛に対する損害賠償のことで、例えば浮気や家庭内暴力でパートナーに苦痛を与えた加害者が、その被害者に支払うお金だ。

テレビなんかで芸能人の離婚騒動をみると、慰謝料で何千万、ときに何億のお金が動いた、という話を度々耳にするが、そこでいう慰謝料とは厳密には慰謝料のことではない。

法律的に慰謝料といえば、あくまで精神的苦痛に対する損害賠償のことで、その額は多くとも数百万円で収まるものらしい。

財産分与に関しては、読んで字のごとく、離婚する際には、それまで二人で築いてきた財産はきちんと平等に振り分けましょうね、というもの。ただし、注意しなければならないのはあくまで「結婚してから」二人で築いた財産のみが対象であるということである。結婚前に持っていた財産は対象外なのである。

そして何より重要なのが婚姻費用(通称コンピ)である。

本書によるとコンピとは

夫婦間でより稼いでいる方が、そうでない方に毎月一定の金額を支払う義務

 のことである。

コンピが何より恐ろしいのは、その期間にある。これは請求が認められてから、離婚が青流するまでの間、毎月ずっと支払い続けねばならないのである。

このコンピがあるからこそ、世の中の離婚裁判は長期化するのだという。

確かに、収入が少ない方にとっては、婚姻期間をできるだけ長引かせたほうが、チャリンチャリンと何の労働もしなくてもお金が入ってくるのだから、そりゃあできるだけ長い間婚姻関係を続けていたいよね。仮に夫婦仲が破綻していたとしても。いやむしろ破綻しているからこそ、非常になってお金をむしり取ろうとする気持ちが働くのだろう。

 

まあ、こういった婚姻制度に対するテクニカルな部分の詳細は、ぜひとも本書を読んでみてほしい。近年世間を賑わせた芸能人の離婚騒動を事例にとって、非常にわかりやすくまとめてあるから。裁判の進み方などもリアリティがあって面白い。

この辺さすが所長である。前に書いたエントリにもつながるんだけど、読ませる文章が書ける人ってのは翻訳がとてもうまい。自分の本がターゲットとしている人たちの思考方法や知識レベルを想像して、そこにピタッと当てはまる文章をかけるってのはとんでもない強みだよな、とぼくは感じた。ぼくが所長のターゲットとしている層の知識レベルを有しているかというと甚だ疑問だけどね。

 

lorenzo9241.hatenablog.com

 

2つ目の学びは、結婚というシステムに対する問題提起について。正直テクニカルなコンピについてなんかより、こっちのほうが考えさせられたし、本書から得られた学びとしては大きかった。

 

本書を読む前は、この本のターゲットは20代〜40代の独身男性で、コンピについて長々と説明し、現代の結婚制度の不備を突くことで、だから世の中のハイスペ男子よ、結婚なんて恐ろしいからしちゃだめだよ、と書いてあるものなのかと思った。

いつもの軽快で小粋なジョークね。それゆえにたまに言われのない非難をうけるのだけど。

しかしそうではなかった。

この本はむしろ、女性のために書かれた本である。

なぜそう思ったか?

前半のコンピの説明にもある通り、結婚するなら自分よりも所得の多い異性と結婚するほうが合理的である。そしてその戦略は、かねてから日本の女性たちが取ってきた戦略とも一致する。ゆえに結婚に憧れる多くの女性にとって、自身より所得の多いハイスペリーマンをターゲットとするのは、間違っていない。

 

しかし、多くの女性が望むような、自身より所得の多いハイスペ男性の数は限られている。それゆえ、結婚のリターンを得られる女性の数も限られているのである。

さらにたちの悪いことに、女性が女性として扱われる期間はとても短い。

多くの女性は20代前半〜30代前半という人生におけるたったの10年の間に、自分よりも所得の高いハイスペ男性を見つけ、結婚しなければならないのである。その期間を逃すと、世の中の男性から(かつては自分が「イカ臭い」と相手にもしなかった男性からも!)相手にされなくなり、一生独身、子なしで過ごさなければならなくなる。

つまり、現代社会の結婚という制度にとらわれている限り、世の中の多くの女性は幸せになれないのである。

でも、ちょっと前まではこの結婚という制度はうまく機能していた。僕らの親世代を見ればわかる通り、「え?あなたまで」という人でも、結婚して子どもを作っていたのである。そう、ほんの少し前までは、本来ならセックスして子作りなんてできないような人たちにも平等にセックス、子作りの機会が与えられていたのである。

じゃあ、今と昔で何が違うのだろうか?

本書によるとそれは「女性の社会進出」であるという。

昔と違い、今は女性も男性と同じようにバリバリ仕事をこなすようになり、結果稼ぎの悪い男性よりもたくさんお金を稼ぐことのできる女性が増えたのである(ぼくより稼いでいる女性なんてゴマンといる)。

でも、女性が結婚相手に求める条件は変わらない。

そう「自分より稼ぎのいい男性」だ。

昔よりお金を稼ぐようになった女性。

昔とそれほど稼ぎが変わらない男性。

しかし、女性は自分より稼ぐ男性を求める。

つまり、ターゲットとなる男性の絶対数が減るのは火を見るよりも明らかである。

だから、昔の価値観で作られた婚姻制度は制度疲弊を起こしている、というのが本書の重要な指摘である。まあ、ある程度以上稼ぐようになった女性が、自分よりも収入の多い男性と結婚を、となると、結婚できる人の数が限られてくるのは当たり前。

そうすると、若いうちから外見を磨き、大手企業にゆるふわ派遣社員として潜り込み、そこで正社員としてバリバリ働いている男性社員に色目を使い、既成事実を作って結婚までこぎつけるのが正しい戦略ってことになるんだけど、それは今回の学びとはかけ離れるので割愛。

そして、不幸になる女性が増えたのも当たり前なのである。

なぜそんなことが起きるのか?

繰り返しになるが、現代の結婚制度、つまり一夫一妻制が正しいという一種の強迫観念にもにた思想が世の中に充満しているからである。

それに対する所長の解は一つ。収入の多いハイスペ男子は一人に縛られるのではなく、多くの女性を妻にしたほうがいいのでは?というものだ。

つまり一夫多妻制というやつだ。

自分より稼ぎのいい男と結ばれたい女性。

たくさんの女性と結ばれたい男性。

二者の利害関係は一致している。

でも、なかなかそうはならない。

障害は何か?

障害は、現代の婚姻制度とその制度が唯一無二の正解だと盲目的に信じているマジョリティの存在である。

制度は変えればいい。

しかし、変えるためには多くの人の支持が必要だ。なぜなら日本は多数決を是とする民主主義の国だから。

しかし、一夫一妻制から一夫多妻制への婚姻制度の改革には、多くの人の支持を集められない。なぜなら多くの人は、昔ながら結婚という制度が、幸せな家庭を築き、幸せな人生を送るための唯一無二の方法であると信じているからだ。

確かに結婚をしたほうが税制面で優遇される場面はある。でも、本当にそれだけのインセンティブで一生幸せに暮らせるのだろうか?てとこには思考が回らないのである。いや、気づいて入るのかもしれないが、世間が怖くて声を上げられないのである。

 

本書で所長が散々主張してきたように、日本の結婚制度は世の為政者たちが、本質的に女性に相手にされない男性たちが暴動を起こすのを抑えるために作った制度だった。

しかし現在、ネットでいくらでも美少女をオカズに自分磨きをすることができる。生身の女性に触れたければ、そういうお店だっていくらでもある。テンガなるものもありますね。

だから、もう暴動を抑えるために作った一夫一妻制である現代の結婚制度は不要になったといえるのかもしれない。

所長の主張は、事実にのみ着目したシンプルなものである。

ぼくにはあんまり反論の余地が見つからないのだが、まあ世の中には受け入れられないだろうね。

なぜなら世の中には思考停止で、「みんながいいといっているものがいい」と考える人が多いから。そりゃあもうたくさん。彼らは建設的な議論ができないのだ。

 

ここから得られる最大の学びは、「大切なのは世の中で正しいといわれるものに自分を当てはめるのではなく、自分にとって何が重要かをきちんと明確にしておいて、それを手に入れるための努力をすること」だということ。

 

そのためには感情や世間体にとらわれるのではなく、制度や客観的なデータに目を向けることが大切だ。結婚で言えば、コンピや財産分与について正しい知識を持っていることは、結婚のメリットデメリットをきちんと見極めるためにとても大切なことだ。

その上で、それでも結婚することにメリットを感じるのであれば、結婚をすればいいのである。問題なのは、自分が選択しようとしているものに対して、無知であること。

 

敵を知り己を知れば百戦危うからず。

 

人生を豊かに面白おかしく生きるために、正しい知識を知ろうとすることは、とても大切な姿勢である。

 

結局結論はシンプルになっちゃうんだけど、シンプル故にしっくりくるのである。

 

すぐ読めるしいい本だから、みんなぜひ読んでみてくなはれ。

特に女性におすすめ。

損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書)

損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書)