思考錯誤

これは、俺の人生の軌跡だ。

【書評】やりなおす経済史を読んで その1.

 

やりなおす経済史

やりなおす経済史

 

面白い本だったので、じっくりアウトプットして自分のモノにしたいと思います。

 

ヨーロッパも日本も、かつては封建制だった。もともとこれは経済用語だそうで、その意味は本書に寄れば「主君が家臣に土地を与え、そこに農民を縛り付けるシステム」とのことらしい。

 

ヨーロッパの封建制は日本のそれより古く西暦700年代から14世紀まで続いたそうだ。

 

封建制はもともとその土地の領主が国王から恩恵的に土地を借り、その代わりに軍事奉仕をするという仕組みだった。つまりは国王の為の制度だった。しかし、王が「不入権」という荘園内(つまり領主の土地)への立ち入り禁止権を認めた時から徐々に領地の私有化が進み、ヨーロッパ各地の荘園は領主の支配する独立国家のようになっていったという。

 

領主は自分たちの領地の農民を手厚く保護し、逃亡を防いだ。領地内では商業(この場合は土地の売買)は禁止され、その他の商業活動も禁止された。荘園内では農業活動のみが許されていたのである。

 

農業中心の封建制度だが、徐々に商品経済が浸透してくる。だんだんと生産力が向上し、余剰生産物が発生したのがその原因である。その余剰生産物を交換する場として「都市」が発達し、その都市で様々な手工業者の同業者組合(ギルド)が発達する。

 

そしてついに貨幣経済が生まれる。その最大の要因は、本書によると「十字軍の遠征」である。

 

十字軍の遠征とは、キリスト教の聖地エルサレムイスラム教徒から取り戻そうと、ローマ教皇ウルバヌス2世がセルジューク・トルコに対して仕掛けた戦い

 

のこと。

 

この遠征は、世界史の教科書でもある通り、ヨーロッパ側の敗北に終わったのだが、経済面からみれば、ヨーロッパ世界とイスラム教世界の交易を拡大させた効果もあったようである。

 

遠い異国の地の人々と商売をする為に、必然的に貨幣経済が発達したのだ。

 

しかも十字軍遠征は封建領主と教会の力を弱めた。遠い異教徒との戦いで多くの領主が死に、教会もその面目は丸つぶれである。

 

領主が死ねば、その領主に年貢を納めるべき農民達は、その年貢をまるまる自分のモノにできた。そうやって富を蓄えた人たちが独立自営農民(ヨーマンリー)と呼ばれ、後の資本家の卵となったそうだ。

 

あくまで歴史の教科書の出来事だと思っていた十字軍の遠征が、後のブルジョワ達を生み出したとは、驚きである。いやはや、歴史に学べとはよくいったものだ。

 

領主と教会が力を弱めた為、王様達は権力の座に返り咲いた。こうして生まれたのが絶対王政である。

 

絶対王政とは、国王に無制限かつ無制約の権力が集中する政体だ。

16世紀に完成した絶対王政は、官僚制と常備軍に支えられた、非常にコストのかかる体制であった。何故コストがかかるか?それは皆が王の立場を狙い、苛烈な権力闘争が繰り広げられていたからだ。王は自分の権力を守る為に、強力なブレーン集団と武力を持つ必要に迫られた。それが官僚制と常備軍で、その2つをキープする為に、莫大な資金を必要としたのである。

 

ここで取られたのが重商主義で、結果として封建制度は崩壊し、商品経済が発達することになったのである。

 

う〜ん、こうやって経済の面から歴史を振り返ってみると、様々な発見があるものだ。資本主義は、もともとそれを目指して生まれてきたというよりも、人間がよりよい生活を求め、学習し、生産性を上げ、様々な地域の人たちと交流する中で生まれ育ってきたものなんだな、と改めて実感した。その中で様々な矛盾点や問題点も浮き彫りになってきたけれど、その問題を解決する為の知恵もまた、僕らは身につけてきたんだよな、と思った。

 

ではでは続きはまた今度。

 

やりなおす経済史

やりなおす経済史