思考錯誤

これは、俺の人生の軌跡だ。

【書評】桶川ストーカー殺人事件 遺言を読んで

 

桶川ストーカー殺人事件―遺言―

桶川ストーカー殺人事件―遺言―

 

ジャーナリストの教科書とまで言われているノンフィクションの名著。

 

2012年に世界仰天ニュースというTV番組でも取り上げられたから、知っている人も多いかもしれない、桶川で起こったストーカー殺人事件の真実を暴きだした本。

 

桶川ストーカー殺人事件は、警察組織の不祥事をあぶり出し、ストーカー規制法の制定のきっかけとなった事件である。

 

とにかく読んでほしい。

 

ずっと積ん読状態で、何気なく読み始めたんだけど、面白すぎて一気に読んでしまった。いや、面白すぎて、というのはすこし語弊があるかもしれないけれど。

 

本書を読んで何よりも恐ろしいと感じるのは、日本の警察組織のどうしようもない実態である。

 

告訴を受理すると検察庁への書類送付義務が生じます。また、県警本部でも状況が管理されるのです。おまけに、あの九月は上尾署の署長が代わった時期で、継続操作事案にはチェックが入るのです。受理してから二ヶ月近く捜査が進展してなければ、問題になります。でも被害者が自分から取り下げてくれれば、すべてチャラ。解決するより、事件そのものを無くしてしまおうと思ったのでは

もしこれが本当だとしたら、一体何の為の警察なんでしょうか。

 

確かに、彼らが忙しいのは分かります。実際には取るに足らない事案や、より優先すべき事件も、きっとあるのでしょう。全ての要求にいちいち応えていたら、彼らの体がいくつあっても足りないというのも、実際に社会人として働いてみると、よーく分かります。

 

でも、だからといって、この桶川ストーカー殺人事件における上尾署の対応は、許されていいものではありません。警察までもお役所仕事になってしまっては、一体我々一般人は、どうすればいいのでしょうか??

 

あともう一つ、本書を読んで印象的だったのは、著者の清水さんのジャーナリストとしての仕事観。嫌われることの多いこの仕事について、彼の正直な考えが述べられた箇所が印象的でした。

 

 この仕事を長くやればやるほど私はそれを感じる。どんなに立派な記事を書く新聞でも、問題意識の高いテレビニュースでも、取材時の事情というのはあまり変わらないと思う。

 事件取材は難しい。一寸先は闇である。落とし穴が連続する中をいつも手探りで取材を進めていくのだ。一歩間違えれば読者を違う方向へ導いてしまう。この事件もそうだった。どこまでも続く長い長い取材の間、私は果たして「正しい」と言えるようなルートを歩いてきたのだろうか。そして、いつまでこんなことを続けていくのだろう。そこにはどんなゴールがあるのだろう。私はいったい何を知ろうとし、何を伝えようとしているのだろう。

 

この本が書かれてから、既に10年以上の歳月が流れている。

果たして、日本の警察機構は、当時よりもまともになったのだろうか?

 

桶川ストーカー殺人事件―遺言―

桶川ストーカー殺人事件―遺言―