数字のレトリックにだまされない為には、その定義をきちんと知ることが大事
最新版 (図解)池上彰の 経済のニュースが面白いほどわかる本 (中経の文庫)
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2014/08/26
- メディア: 文庫
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池上彰さんの本は、分かりやすいのはもちろんだけど、きちんとTVが遠慮して言わないようなことまで言及してあって、非常にタメになります。
今回彼の本を読んで一番良かったのは「失業率」の定義についてきちんと学べたことです。
失業率とは「労働力人口」の中の「完全失業者」の割合のことをいいます。
どういうことか?
15歳以上の日本人は、大きく2つに分類されます。
一つは働く意志があり、今すぐにでも仕事に就ける人たちで「労働力人口」といわれます。
もう一方は「非労働力人口」で、こちらは学生や専業主婦、高齢者など、働けない人、もしくは働く意志のない人のことをいいます。
・15歳以上で、働きたい人、もしくは働いている人=労働力人口
・15歳以上で、働けない人、働く意志のない人=非労働力人口
です。
繰り返しになりますが、失業率とはこのうちの労働力人口の人たちの中で、仕事を探しているが、現在仕事をしていない人の割合を%で表したものです。この割合は総務省が毎月全国約4万世帯の約10万人を対象に家庭訪問し、そこで調査票を記入してもらうことで算出しているそうですが、ここで気をつけなければならない点が2点あります。
1点目は、調査月前月の月末1週間に少しでも労働をした人は、完全失業者と見なされないこと。日雇いバイトをしたり、知り合いの仕事をちょっと手伝ったり、家業を少し手伝ったりしただけでも就業者とみなされるのです。
2点目は、それまで仕事を探していた人が、仕事を探すのを諦めた瞬間から労働力人口から非労働力人口に移ってしまうことです。
これらの点を鑑みると、完全失業率が働きたくても働けない人の人数を正確に表したものだと言えないことが、分かってくると思います。
食うに困って日雇いバイトを続ければ、就業者。でも、家族を養うだけの収入は無く、苦しい生活を強いられている人は失業者としてカウントされません。
心も体も健康で、やる気だってまだまだある人が、頑張って何百通も履歴書を企業に送りました。でも、面接に呼んでくれた企業は1社もありませんでした。そうなったら、ちょっと就職活動を諦めて、ゆっくりしようと考えるかもしれません。そしてその瞬間、その人は「非労働力人口」のカテゴリに移されるため、失業者とは見なされなくなります。
だから、実際の失業率は本当に働きたい人の数より少なく出るのです。
公的機関の発表する数字よりも多くの人が、働きたくても働けない状況にいるのではないか、という事実に愕然としました。いやあ、お役所仕事万歳!ですね。
というかそもそも、自分は失業率の定義をきちんと考えたことがありませんでした。
なんとなく3%台なら大分ましなんじゃね?位にしか捉えておらず、思考停止に陥っていました。このことは深く反省しなければいけません。
こうやって人は、数字のレトリックにだまされていくんだなあ。
例えば他にどんな数字がありますかね?
消費者金融の金利?政府の支持率?経済成長率?楽天のポイント還元セール??
マスコミや広告代理店が発表する数字を彼らの言うままに受け入れるんじゃ無くって、その定義や、算出方法なんかをきちんと理解しましょう。そして、その数字が本当に問題の実体を正確に表しているのかを考えることが大切だと、改めて思いました。
※失業率については、下記のサイトがよくまとまっていて参考になりました。